諏訪 美咲
2016.9.25~9.30
アメリカWisconsin州のWisconsin 大学の牛舎設計に関するエクステンションセミナーに参加しました。
講師:Ken Nordlund,DVM/ Rebecca Brotzman, DVM/ Courtney Halbach
子牛の呼吸器病は子牛期の主要な死亡原因となり、成長を妨げる大きな要因の一つとなっています。このエクステンションセミナーは呼吸器病の予防を子牛舎の環境面から科学的に考えるものでした。2012年から興味を持ち情報を集めていたPPTVでしたが、ようやくウィスコンシンで行われるワークショップに参加することができました。
現在初任牛価格は高騰し、この傾向は続いていくと予想されています。そのなかで顧客牧場の間でも後継牛の育成に対し関心の高まりを感じています。
子牛を健康に、大きく。その一助となる技術が詰まった1日でした。
呼吸器病の予防に関する3つのカギ
3 を実行すると、1 の浮遊細菌数は上がる。これを両立するのがPPTV技術です。
ダクトファンで外から空気を取り入れた空気をチューブで牛舎全体に優しくいきわたらせる。仕組みとしてはファンとチューブだけで極めてシンプルです。
しかしファンと、チューブ・チューブの穴のサイズなど、適切に設計されないと空気がしっかり出なかったり、逆に子牛のところで風が吹きすぎたりしてしまいます。
ワークショップではPPTV設計用のスプレッドシートの使い方や、設置の仕方、注意点などを学び、最終的には設計が行えるよう指導を受けました。
このセミナーを修了することでTrainee(訓練生)となり、その後の課題を提出して合格すればCertified Consultant (認定コンサルタント) となることができます。現在(アジア・オセアニア地域で1人目の)Certified Consultantとなるべく、課題の提出中です。
(2016.12.9)Dairyland Initiative Certified Consultant for Youngstock Supplemental Positive Pressure Tube Ventilation System Designに認定
水はけを良くするためハッチのベースを小石にしている。
講師:Nigel B Cook
生産性を落としている原因ステップ:遺伝能力・施設・エサ・管理
どれも重要なことですが、牛舎施設がシステマティックにできていないといくらエサ・管理を良くしようとしても不可能なことが多々あります。
例えば、掃除のしづらい飼槽ではいくらDMIを上げようとしても上がらない、添加物を与えても奏功しない。乾乳期間をしっかり取りたいが乾乳舎のキャパシティがいっぱいで移動できない。ワクチンを打ちたいが牛が捕まらないので打てない。掃除がしづらく乳房炎が減らない。夏暑くて種がとまらない。など数えきれないほど、日々こういった施設が大きなネックとなっている事例を見かけます。
このジレンマはアメリカでも同じようです。なかなか牛舎を新築する・改築するということは頻繁にあることではありませんが、小さな設備の足し引きだけでも、牛も人も快適に過ごせる牛舎環境を作ることが可能であると感じました。
フリーストールで増頭を考えた場合、今の施設に見合った頭数の中で最大値を飼うのが、収益を大きくする方法です。飼える以上の数を飼ってしまうと牛はストレスを感じ、かえってパフォーマンスは悪くなります。
そのことは分かっていても、今までは飼っていく中でその最大値を探っていく状況でした。今回のワークショップで計算方法を学んだことで、各牧場の適切な牛群サイズ・一つの群の大きさ・施設の必要面積などを再検討することができるようになりました。
全米1位の乳量を記録したことのある、遺伝的に非常にすぐれた牧場。
アメリカ国内だけでなく中国・日本にもET卵を輸入しており、この血統が日本でも種雄牛として活躍しています(ミステイ)。
乳量:15136kg /lact 46.8kg/day (bSTなし) 400頭くらい
今回ウィスコンシン州マディソンの優秀な2つの牧場を訪問して感じたことは、牧場もその周りもきれい!だということでした。2つの牧場だけでなく道すがら見かける牧場も同じです。整然としてロスがない。ロスがあればすぐに気づくことができる。小さなほつれが次第に大きな穴になっていくことを私たちは知っていますが、ついつい面倒で無視しがちです。アメリカの酪農が優れているのは大規模化しているからではなく、「大きなことを1つ、ではなく細かいことを全部する」ためなんだと改めて実感しました。