カルフォルニア大学/Veterinary Medicine Teaching & Research Center(以下VMTRC)

諏訪 森大
2018年6月4日~29日(4週間)

VMTRCはカルフォルニア州のトゥーレアリ(Tulare)という町にあります。トゥーレアリの平均気温は12月/1月:12℃、7月/8月:34℃です。夏は40℃近くになることも珍しくないですが、降水量が少なく湿気がないため日陰では過ごしやすいです。2017年のカルフォルニア州の乳生産量は全米で一位(18.5%)、その中でもトゥーレアリはカルフォルニア州全体の27.4%を占める酪農地帯であり、一戸当たりの平均飼養頭数は1700頭になります。

VMTRCのサービスは大学の附属機関として多岐にわたります。疾病のサーベイランスや栄養管理の試験研究といった学術分野、繁殖検診を中心とした臨床分野、専門医の育成/学生の現場実習という教育分野、剖検や乳汁検査受託があります。私は臨床分野であるクリニカルチームの繁殖検診に1ヶ月随行し、大規模な農場ではどのように牛群を管理し、獣医師が繁殖検診を行うのかに注目しました(滞在時:VMTRCの獣医師2名、専門医研修生3名)。

牛群管理の主流となっているのはやはり牛群管理ソフト”Dairy Comp 305”でした。日本ではまだあまり普及していないDC305ですが、農場自身がこのソフトを駆使しています。事務所にはパソコンが二台以上あり、一台はDC305専用としていつでも確認できるようにしている事が印象的でした。

繁殖管理については多くの農場が高い妊娠率を維持していました。しかし、革新的な技術があるのではありません。排卵同期化、発情発見、早期妊娠診断といった既知のプログラムを農場が独自に組み合わせて授精を行うことがキーになっており、その合理性には驚きました。アメリカの資料は日本でも手に入り易くなっているのでこれらの技術は知ってはいましたが、アメリカの検診に参加することにより各農場の戦略として繁殖プロフラムをどう考えていくべきか見えてきました。またDC305を開発した獣医師にも会うことができ、当病院でもより一層DC305を活用していきたいと考えています。

一日のスケジュール

AM6:00~12:00 繁殖検診(顧客農場は9件)
検診所要時間に関係なく早朝から検診をはじめる。基本的に一日一件のみ。

PM13:00~ 曜日・状況に応じて
・一般診療
・試験研究のためのサンプリング
・牛の販売/移動に係る疾病検査
・実習学生とのディスカッション(研究課題や論文読解)

VMTRC
カルフォルニアブルーの空に負けない屋根が特徴。
オープンロット(ドライロット)
広大なパドックに日よけ屋根が設置されている。降水がほとんどないカルフォルニアならではの光景である。
検診風景1
検診風景2
飼槽に屋根があるタイプ。
牧場により形態はさまざまだが、ソーカーはどの牧場も早朝から稼働している。
日陰に集まり、虫を避けるため群れをなす牛たち。
フリーストール牛舎
サイドはすべてオープンになっており、パドックが併設している。
子牛ハッチ
木造高床式が一般的。床は簀の子になっており、ウォーターフラッシュにより地面が洗浄される。
アルファルファ牧草地
輸入乾草には土砂、無機物が混入しているためしっかりと飼料分析しなくてはならないことを実感する一コマ。
アルファルファ
奥に広がるのが飼料用コーン。
カルフォルニアが誇るアーモンド
外果皮は副産物として飼料に用いられ、殻はピスタチオと共に敷料となる。